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2013年6月

2013年6月20日 (木)

清水産婦人科クリニック1審主張、優華の死は「無症候性大動脈弁狭窄症の(心室細動による)突然死」

一審で清水産婦人科クリニックの主張、

優華の死因は「無症候性大動脈弁狭窄症の(心室細動による)突然死」
その根拠として、提出された二つの英語文献

しかし、これを訳してみると、清水産婦人科クリニックの主張を裏付けるものではありませんでした。
見当違いの文献です。
難しい英語文献で、煙に巻くような方法です。


一つ目の文献
『 「乳児期に全く無症状であった患児が急速に大動脈弁狭窄の進行した5例の報告があり,そのうち3例が2尖大動脈弁でした

出生時体重1.70~3.65kgの無症候性の新生児5例(男児3例、女児2例)があり、うち1例(患者1)は未熟児である。3例の患児(患者2・4・5)は初発症状として心雑音が診断された。患者1は最初は呼吸困難症候群・動脈管開存症を伴う未熟児として診断された。患者3は最初は大動脈縮窄症として診断された」』


しかし、この5症例は「無症候のため患児の死亡に至るまで診断不能の大動脈弁狭窄症」という症例報告ではない。

各患児について最初の診断事項が説明されており、「無症候性=診断困難」ではないことが明瞭である。ここでの無症候性の意味は、「直ちに医療介入を不可避とするほどの症状が発現していない」というものと理解するしかない。病的な症状がない、診断もできないというものではないのである。 
確かに、翻訳すれば「無症候性の新生児大動脈弁狭窄症」の症例報告ではある。しかし、あきらかに、「無症候性だから、診断困難」でもなければ、「無症候性だから、突然死に至った」というものでもない。ましてや全例、心室細動とは無縁である。注目すべきは、5症例全部が大動脈弁狭窄症と確定診断を受けていることであり、5症例のうち4症例は確定診断を経て治療を受け、結果の良好が確認されてもいる。

  1例だけ、表1の患者3が生後7か月に「突然死」している。しかし、この患者は二尖大動脈弁患者ではない。別の重症心疾患である大動脈縮窄(だいどうみゃくしゅくさくCoA;Coarctation of the aorta: CoA)に合併した大動脈弁狭窄症で、およそ範疇を異にする、と指摘せざるを得ない。生後7週目の圧較差測定で大動脈弁狭窄症と診断されているが、剖検はなく死亡原因は特定されていない。優華の症例と比較に適した症例ではない。

なおこの5症例は、1986年11月~1992年10月の期間における東テネシー州立大学(病院)でのものであるという。すべての患児が、遅くも生後1週間で、大動脈弁の圧較差の測定がなされている。ドブラー検査、あるいはカテーテル検査によって圧較差の測定が繰り返され、異常値に至るとバルーン形成術、あるいは大動脈弁切開などの外科手術が施行されている。

  優華より20年以前の患児に、これだけの心疾患に対する精査と診療が行われていることに注目せざるを得ない。この文献は、清水産婦人科クリニックの新生児医療の低水準を改めて思い起こさせる。



二つ目の文献

『 「突然死の2ヶ月乳児の二尖大動脈弁の症例報告」 

児は、「生後2週目に始まった多呼吸、成長遅延、母乳困難が臨床的に確認された。生後4週目の心臓超音波検査において、心房中隔欠損(ASD)、心室中隔欠損(VSD)、動脈管開存症(PDA)、大動脈縮窄症は認められなかった。ドップラーで測定した左心室一大動脈間の収縮期勾配は74mmHgであった、病歴から、臨床診断された二尖大動脈弁、犬動脈弁狭窄症による左心室流出障害、および憎帽弁閉鎖不全症が明らかになった」「予定されていた手術を行う前に、午前9時頃に母親がベッドの中で仰臥位で死亡している乳児を発見した」とされている。


  イスタンブールの病院の症例まで探せばそのような症例の報告も見つかるのかも知れない、と思い込んでしまいかねないが、ところがまったくそうではない。

当該症例について、「(組織学所見)肺には、肺胞中隔の肥厚と単核球の炎症性浸潤を特徴とする間質性炎症反応が見られた(図5)、肺胞内組織球、まれな巨細胞、肺胞上皮細胞があった。肺の病理学診断は間接性肺炎であった」との所見から、「本症例で、間質性肺炎があったことは主要な死因であると考えられる」と結論づけている。大動脈弁狭窄や心不全による死ではなく、死因は間質性肺炎とされている症例なのである。

  
  大動脈弁狭窄症でもあった患児の心臓の重量は「25g(この年齢群における予期される心臓の重量:22~23g)」とされ、優華の症例(心重量43g)とはその心肥大進行の程度が明らかに異なる。

  しかも、留意すべきは、この症例の患児も生前大動脈弁狭窄症の確定診断を受けており、圧較差も検査済みで予定されていた治療の直前に亡くなっている。間質性肺炎死さえなければ、診断と治療の機会が確実にあったのである。これも、外国(トルコ)の患児が、当該国の医療機関から、優華に比してはるかに手厚い世界標準の診療を受けていたことの報告例なのである。

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